「男と男のロマンがつまっています。」
近来稀にみる傑作まとめフレーズだと思った。
昔、「ぴあ」という首都圏のあらゆる公演・イベント情報を網羅した雑誌が売れに売れていた時代があった。
当時、恋愛というものにてんで縁が無かった女子学生だった私がひそかに楽しみにしていたのが、いわゆる「ピンク映画」と呼ばれる作品のタイトルを読むこと。
実際に劇場まで行こう、とは少しも思わなかったんだけどね。
(だって、嫁入り前の娘ですもの。そんな大それたこと...。)
その手の映画が上映されているのは、銀座とか渋谷とかの、おしゃれな男女が行き交うような繁華街から一歩引いたような地域にある小さな劇場、というパターンが多かったように思う。
地代が安そうで、ファミリー層があまり行かなさそうで、どこかうらぶれた雰囲気の漂うところ...例えば、ちょっと場末感が漂う高田馬場とか浅草とか、神奈川だと記事にある野毛地区...あたりが代表格かな。
そりゃそうだろう。休日の家族連れが通るような場所に、あられもない姿の男女が大胆にフィーチャーされたポスターや、刺激的文言に満ちた看板は似合わない。
で、そうした「怪しい映画館」で上映されている低予算作品(スイマセン)のタイトルは、
「団地妻~」(←この辺はいかにも昭和。)
「女教師~」
「チ〇ン電車」
といった、お馴染みの枕詞で始まる物が圧倒的に多かった。
だが、注意して読んでいくと、中にはハリウッドの人気大作やドラマのヒット作のタイトルをパロったよねーこれは!ってなものも混じっていたりする。
そんな時は、おぬしなかなかやるな、と心の中で拍手送っちゃったりしたものだ。
そういうちょっとひねりの効いた面白いタイトルを探すのが楽しくって、大学からの帰りの電車ではよく売店で「ぴあ」を買って、隅々までほじくり返すように読みふけっていた。
210円(当時)の元はしっかり取っていた、と思う。
野毛の光音座(クリックは自己責任でお願いします。)、か。
覚えておこう...って、覚えてて一体どうするんだ。
まぁ、この渾身のルポルタージュを読んだ限りでは、私が今後この劇場に行くことは100%無いだろうけどね...。
小心者なもんで。はい。
世の中には「想像にお任せします」「後は察してください」というアドバイス通りにするのがベスト、というケースが数多くあるものだ。
人間やり始めて数十年も経つと、それが自然に分かるようになる。
心が折れそうになる寸前まで(いや、折れてしまったかもしれない。)粘り強く取材してくれた川邉絢一郎さんというライターさんには、心から「お疲れ様でした」と言いたい。
もしお会いできるのであれば、意味深な「肩、ポン。(=シゴトッテ、タイヘンダヨネ...)」をもってして感謝の気持ちを伝えたい、と思う。